前にアインシュタイン・ロマン6:エンデの文明論を少し紹介しましたが、
これはその本の中にあったミヒャエル・エンデの写真です↓
あれっ?、なんでエンデさんが和室にいるの??
と思っていたら、本文によると何とエンデの奥さんは、彼の本の翻訳者である佐藤真理子さんなのだそうです。
ぶったまげーーー!
これって有名な話しなのでしょうか。私は初めて知りました!?
エンデの話しには、ファンタジーと現実の世界が錯綜する東洋的なところがありますが、
日本人と結婚してしまうということはもともと東洋的な所が相当にあったんでしょうね。
さて、アインシュタイン・ロマン6の中では、画家であったエンデさんの父エドガー・エンデさんの絵も何枚か紹介されていました。
このお父さんもまた神秘思想家のような手法で絵のインスピレーションを得ていたそうです。
それは暗室にずっと籠って、イメージがパッと出た瞬間に、それを絵にするのだそうで、
したがって本人にもなぜそのような絵になったのかが説明できないのだそうです。
私はこの話しを読んだ時、チベット僧が石で造られた部屋や洞窟に籠って2-3年、長い人だと数十年と修行する様子を思い浮かべました。
チベットには様々なマンダラがありますが、彼らも同じような状況で鮮烈なヴィジョンを得たものと思われます。
時間・空間を表すコンピューターグラフィック
Ⓒカーネギー・メロン大学 アインシュタイン・ロマン6より
下はエンデの描いた今回のテーマである文明砂漠のイメージ↓
エンデは現在の人類の知が分裂した状況にあることを警告しています。
一つは科学的な知で、もうひとつは宗教的な知です。
西洋の科学者は、月~金には科学的な知の原理のもとに働き、週末になると教会に足を運び神に祈りを捧げる。
これは人類の陥ってしまった一種の精神分裂病であり、それが文明を荒廃へと導いているのではないかと指摘していました。
科学の考え方は、キリスト教のドグマに対する反発に端を発しています。
誰か権威のある人が言ったから、経典にこう書いてあるから世界はこうなんだという考え方ではなく、
自然現象を観察し、そこから得られる情報をもとに万物を解釈していこうとするのが科学です。
科学が前提としているのは、「観察」、すなわち誰でもが確かめることのできること、再現可能性のあるものを扱うということです。
それは数値化できるということでもあります。
科学は科学が扱える現象、数値化できる現象のみを扱うのであって、
従ってそもそも科学が扱えないものもこの世にはあるということが前提となっています。
つまり科学は、平均的な人間の知覚力をもとに構成された知の体系です。
しかし一方、宗教的な知というのは、特殊な人、特殊な意識状態によって感得された知の体系であり、
そのような人たちと同じ見解を得るには、観察者自身の知覚力の向上=修行が求められます。
たとえば、夢を例に挙げれば、夢を見ないという人にとっては夢は存在しませんが、朝起きた時に夢を覚えていようと意識することで、多少夢をを覚えていることが出来ます。
またレム睡眠をしている人を起こせば、その時にな夢を見ていたことをその人自身に意識させることが出来ます。
このように、意識を注ぐとによってはじめて見えてくる世界というのがあることがわかります。
このような「特殊」な意識状態によって感得される知と、平均的な知覚力によって得られる科学的な知をどのように統合させていくかということが、今後の人類の課題になって来るのだと私は思います。
面白いことに精神分裂病は、現在、統合失調症と呼ばれます。
そもそも科学的な知と宗教的な知とが別々にあるのではなく、本来は一つのものなのだと思います。
人間に与えられている理性を無視し、盲目的な信仰を説くことを強要した反動で、理性に重きを置く科学に振り子が振れたのが現在であって、
本来宗教的な知も、理性を活用しながら、自ら体験を通じて確かめていくことの出来る世界だと私は思います。
科学的な分析能力を保ちつつ、自らの内なる世界を探求し、物質的な知と従来の宗教的な知をなんの矛盾もなく統合するというのが
「統合失調症」におちいってしまった人類の進むべき方向なのではないかと私は思うのです。
タト・トワム・アシ
本書の中に、この言葉が紹介されていました。
これは「汝はそれなり」という意味のインドの言葉です。
個(アートマン)という視点で見るとバラバラに見えるものも、大きな視点から見るとすべては分かちがたく一体をなしているのかもしれません。
人類がこのような視点に立てるかどうかが、今後の文明が不毛な砂漠になるのか、豊かなオアシスになるのかの分かれ目になるのではないか、
と今回のエンデの文明論を読んで思いを新たにしました。
おしまい
参考:
科学の方法 (岩波新書 青版 (313))
エンデの文明砂漠 ミヒャエル・エンデと文明論 (アインシュタイン・ロマン)
佐藤真理子さんの翻訳本
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