先日ETV特集でやっていた、
アフガニスタンで水路を作る医師中村哲さん
の番組を見ました。
最初は医者として診療所を開設していただけでしたが、
現地の人たちが真に必要としているのは何かを見ぬき、水路を作ることでそれを支援し、
最終的には現地の人たちが自立し、
それを自分たちで維持、発展させていけるように轍をつける。
その苦節の15年の映像でした。
干上がった土地が緑によみがえることによって、
干ばつ→貧困→戦争
という悪循環を断ち切り、
結果として平和をもたらした中村哲さんは、ノーベル平和賞に値する人物だと、私は思います。
水であそぶ子供たちのはちきれんばかりの笑顔が印象的でした。
私はその映像をみて、素晴らしいな、、と思うと同時に羨ましい、、と感じました。
それは、いまのアフガニスタンにとって、
水路を作ることが人々の幸せに直結する
という、とても明確な展望があるからです。
水路を作ることによって、干上がった大地を潤し、作物が育ち、
食糧に困らなくなり、人々が健康になり、豊かになり、平和になる。
とてもわかりやすい図式です。
明治期の日本、戦後の日本も同様だったと思います。
西洋のやり方を導入して日本を近代化するんだ、
焼け野原になった日本を立て直すんだ、
明確な目標があり、それに向かって猪突猛進突き進んできました。
しかし世界が羨むほどの豊かさあふれる国になった現在、
アフガニスタンの子供たちに見られるようなはちきれる笑顔は見られなくなり、
アフガニスタンの水路にあたるような、幸せの方向がわからなくなりました。
アフガニスタンも、食料が豊富になり、水路が当たり前になれば、
幸せの感覚もだんだん麻痺してくるのかもしれません。
幸福感を感じれなくなってくるのかもしれません。
では、いまの日本でいかにして幸せを実感できるようになるのか、
今の日本でアフガニスタンの水路にあたるものは何にあたるのでしょうか。
私は、物が豊富になって幸せになる図式というのは、ある時期までで、
それ以降はむしろ必要以上の物はもたないことが、人の幸福感につながるのではないか、という気がしています。
単純に栄養、という面で考えれば、栄養が足りなければ体調が悪くなり、病気にもなり幸福な状態とはいえませんが、
逆に食べ過ぎれば当然また病気になってきます。メタボや糖尿病、ガンなど、いうまでもありません。
私は日本のアフガニスタンにおける水路は何になるのか、、と考えてみた時に、
東京の地下鉄が思い浮かびました。
あの異常なまでに張り巡らされた地下鉄網からは、
更にぐちゃぐちゃに入り組んだガン組織を思い出しました。
水路=幸せという図式を持ち続けていると、それがある時期からマイナスとして作用し出すのではないか。
ある時期からは、水路の建設=幸せという思考形態から脱却しなければならないのではないか、と思ったのです。
物があふれると、今度はその物を維持するために労力をとられ、結局いつまでたっても忙しいままです。
少し前に、ウルグアイの元大統領ホセ・ムヒカさんの本を読んだのですが、
物は必要最低限にして、
自分で好きなことができる自由な時間を持てることこそが真の豊かさだ
と述べていましたが、
そういうことかもしれない、と私は思いました。
ホセ・ムヒカさんは、バリバリの左翼の闘志で、6-7年だったか投獄されていた経験があるとのこと。
その時、武力闘争によって社会を変えるという自分のやり方が間違っていたこと、
人にとって本当に必要なことはなんなのか、人の幸せとはなんなのか、に気付いたと言います。
南アフリカの元大統領ネルソン・マンデラ氏も、
15年ほどの投獄の経験がありますよね。
人は内省する時間もつことで本質的なことに気付けるのかもしれません。
物が多くなると、栄養にしろ、所有物にしろ、有害になってくることが多く、
持っている物に自分が振り回される、物に人間が使えるという事態になってしまうように思うのです。
私は、物を持つよりかは、物はなるべくシンプルにして、必要なものは借りるようにして、体験を重視するようにしています。
この世に私たちは旅をしにきているのに、色々なやりたいことをしないで、
いずれは手放さなければならない物の維持に労力を費やすというのは、なんか勿体ない気がするですよね。。
前に見たネットのニュースで、
死ぬ時に後悔するときの第一位は、自分の行きたい場所に行けなかった、、
ということらしいです。
死ぬ時にそんなことにならないように、やってみたいと思うことは、この世で思いっきりやっておきたいな、、と私は思います。
ということで、現在の日本において、アフガニスタンの水路にあたるものはなんなのか、という問いに対して、
その一つの答えは、むしろ水路を作り過ぎないようにする、ということなのかな(笑)、
と感じたと同時に、
物よりかは体験、あるいは物よりは心を大事にする、
自分の心の奥深くの言葉に耳を澄ませることによって、
自分が本当にやりたいと思うこということを知り、この世でしっかりそれを実現することなのかな、
などと思った次第でした。
そして、もしそれが人を助けること、人を喜ばすこと、だとすると、
もっとも幸福感を感じているのは、もしかすると中村医師その人なのかもしれない、、
などと思ったのでした。
おしまい。
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