2009年3月19日木曜日
ポアンカレ予想から
先日NHKスペシャルで
100年の難問はなぜ解けたのか~天才数学者 失踪の謎~
という番組を放送していました。
これはアンコール放送だったため私は今回で2回目でしたが、見るたびに数学の奥深さ、はたまたある種の恐ろしさを感じました。
番組は100年来数学者を悩ませてきた『ポアンカレ予想』がどのようにして解かれるにいたったかを紹介したものでした。
ポアンカレ予想:充分に長いロープで宇宙を一周させた時に、その両端を引っ張ってたぐりよせたときに、そのロープをすべて回収できたら、宇宙はおおむね丸いといえるだろうか。
ポアンカレ予想はだいたいこんな感じでした。
最初解法にあたった人たちは、回収するロープがからまってしまうという問題にぶつかったそうです。しかしそこからひとつ大きく飛躍させたのはトポロジー幾何学でした。
トポロジー幾何学からは、あらゆる空間はすべて8つのパターンに分類されるのではないかという予想がたてられ、これを証明すれば、それがすなわち「ポアンカレ予想」を解法することにつながるということがわかったのです。
最終的にポアンカレ予想を解いたのは、ロシア人数学者グリゴリ・ペレリマンという人でした。
彼はその解法を、それまでポアンカレ予想に関わってきた数学者たちの前で説明しましたが、誰ひとりとしてそれが正しいのか理解できなかったといいます。
それもその筈、彼が用いたのはトポロジーではなく、時代遅れとされていた微積分を応用したものであり、彼が得意とした物理の概念を用い、空間を膨張させたり、収縮させたりしていたからです。彼の数学の才能は他の数学者も全く理解できないほどとび抜けていたようです。
この功績により彼は数学のノーベル賞といわれるフィールズ賞を受けることになるのですが、なぜか彼はそれを辞退し、世間との接触をもまったく絶ってしまったのです。
最後までその理由は謎のままでしたが、番組の最後において、彼が親しい友人に「最近新しいことに興味をもっているんだ」ともらしていたと語られていたことが唯一の希望でした。
しかし「その興味の対象が数学なのか、何なのかはわかりませんが、、、」と付け加えられていたところに、彼がポアンカレ予想の解法にあたってどれほど深く数学の世界を彷徨い、精神を疲弊させてしまっていたかが伺えました。
これとの関連で、人に勧められたこともあり、私は最近『博士の愛した数式』という小説を読みました。
私はだいたい月に10冊、年で120冊ぐらいのペースで本を読みますが、小説はマンガと同じで娯楽、フィクションだという思いがあってか、小説の類はおそらく一年で5冊も読まないと思います。
事実は小説より奇なりという言葉が有るとおり、私には先のドキュメンタリーがあまりにも重かったので、この小説もやはりどちらかというと軽く感じられてしまいました。
小説としてはそれなりによくまとまっていて、楽しめましたが、その中でいくつか数学の事項に関することで、へぇー、と思わされるところがありました。
つづく、、、
参考:
NHKスペシャル:
100年の難問はなぜ解けたのか~天才数学者 失踪の謎~
http://www.nhk.or.jp/special/onair/090309.html
小川洋子 『博士の愛した数式』 (新潮文庫) 新潮社 2005
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