2009年4月9日木曜日

出現、数学の天才!



前に書いた、
日本人の独創性についての続きで、『博士の愛した数式』の著者 小川洋子さんと数学者の藤原正彦さんとの対談本

『世にも美しい数学入門』筑摩書房 2005

から印象に残ったことを書きたいと思います。

この本、実は旅のお供にもっていったのですが、アマゾンの書評には、読む速度が普通のひとでも数時間で読めてしまうと書いてありました。

私はそんなに読む速度が速くないので、まぁ片道ぐらいはもつかなと思って携行したのですが、ホントに数時間で読み切れてしまい、


( ゜o゜)

目がテン状態、行きの電車の中で既にお荷物と化してしまいました。


前置きはそれぐらいにして、さっそく内容に入っていきたいと思います。

まず最初は、素数に関する予想についてです。

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藤原 素数に関して言えば、「ゴールドバッハの問題」というものもあります。

小川  ええ、聞いたことはありますが、まだ証明されていないんですか。

藤原  証明されてないんです。世界中の天才がよってたかってやっても、びくともしないんですから。ほんとに素数は手に負えないんです。「ゴールドバッハの問題」というのは、

6以上の偶数はすべて二つの素数の和で表せる」というものなんです。

6=3+3
8=3+5
10=3+7=5+5
12=5+7
14=7+7=3+11

小川  うまくいきそうですけど。

藤原  このままどんどんどんどん何億何兆までやっても、コンピューターで確かめると全部オーケーです。でも数学の世界では何兆なんて小さい。

一兆の一兆倍だって小さな数です。たかだか有限な数ですから。一兆まで確かめられていても、証明ができてないと、「だからなんなの?」となっちゃう。

すべての数学者はゴールドバッハの問題は正しいと思っているんです

『世にも美しい数学入門』p.131-132

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素数に関してこのような予想があることは初めて知ったのですが、と同時にそのシンプルさにとても驚きました。

しかもどんな天才が挑んでも、この証明ができないというのがまた凄いです。


私がまず思ったのは、どうしてこういうことを学校で教えないのか、ということです。

教科書の端の方にでも、素数に関してはまだこういう問題があるんですというちょっとした豆知識的な解説があるだけで、相当数学に対する興味の持ち方が変わってくるだろうと思うのです。

学校で教えるのは今まで人類が築いてきた知識の成果(果実)ですが、まだ実になっていないけどこういうものもあるんだよとか、

いまの段階ではここまでですが、さらに先に行くとこういう世界が広がってますなんていう紹介があった方が、学ぶ方はとても興味をもつと思います。


教科書的な知識というのは既製品であり、ある意味おいしいものがぎっちりつまった御馳走だと思うのですが、それを機械的に、

はいこれを食べなさい、次はこれ、なんて言われていたら、食欲をなくしてしまうのではないかと思うのです。

学ぶ側のやる気を引き出すような、食べる必要のない周辺的な知識も同時に教科書に載せたら学びがもっと楽しくなるのではないかと思うのです。


次は、天才数学者が生まれる条件についての記述です。

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藤原 私もヨーロッパで学会なんかあると、ついでに、そういう天才数学者の生まれたところなんかを訪れたりするんですね。そうすると、アジアでもヨーロッパでもそうなんですけど、天才が出たところというのはきまってるんです

世界中、人口に比例してどこでも生まれるわけではないんですね。どういうところに生まれるかというと、私の考えでは三つ条件があるんですね。

第一の条件は、神に対してでも自然に対してでもよいから、何かにひざまずく心を持っているということ。天才をよく生むイギリス人なんていうのは、あまり神様を信じていませんが、伝統にひざまずいているんですね。

小川 ああ、なるほどね。

藤原 日本人は神仏にひざまずいたり、自然にひざまずいたりしています。やはり天才を輩出する南インドの人びとは、ヒンズーの神々にひざまずく心があるということですね。

それから第二の条件は美の存在ですね。美しいものが存在しないと絶対に数学の天才は出ないんです。

子どものころから美しいものを見ていないと不可能です。知能指数が何百あったってそんなの関係ないですからね。

それから第三の条件は、精神性を尊ぶということです。要するにお金を尊ぶといった物欲ではなくて、もっと役に立たないもの、精神性の高いものを尊ぶ。

例えば文学を尊ぶ、芸術を尊ぶ、宗教心をもつ、とかいうことです。そういう三つの条件を満たしたところ以外からは天才は出ないんです。

『世にも美しい数学入門』p.39
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この藤原さんが提起している天才出現の三要素というのはとても面白いと思いました。簡略化すると、大いなるものへの謙虚さ精神性ということになるんでしょうか。

前に日本人の独創性のなかで引用した箇所に、日本には俳句があるから偉大な数学者を輩出するんだという記述がありましたが、そういう美的なセンスと科学の最先端ってリンクしているんでしょうね。

また子供のころから美しいものを見ていないと知能指数がいくら高くても意味がないというのはよく心に留めておくべきことかなと感じました。

ヨーロッパの方では、六歳以下のこどもに算数や文字を教えてはいけないとされているそうで、むしろ自然の中で積極的に遊ばせるそうです。

日本でも早期教育とかいって、目先のことにとらわれて、子供の芽を摘むようなことがあってほしくないなぁと思いました。


しかし数学の天才の中でも、人智を超えた超ド級の天才というのがインドにいたようですね。

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小川 そのラマヌジャンがどれだけすごいかというと、いろんな定理を夢の中で発見しちゃうんですよね。

それを証明しなければいけないという必然さえ感じずに、自然に真理を見つけてしまうという人だった。

藤原 そうなんです。高校出ただけなのに、あんまりどんどん発見しちゃうんで、インドでは大天才となったんです。

でも、植民地インドの片田舎では天才でも世界に出たらどうか、ということで宗主国イギリスの大学教授の何人かに発見した公式を送るんですが、みんな突っ返されたり捨てられるんですよ。<中略>

ところが、ケンブリッジ大学のG・H・ハーディという教授が読んだら、「すごい!」ということで。彼はたまたまその分野の専門家だった。で、彼は苦労してラマヌジャンを呼び寄せるわけです。

そうたら、毎朝、六個ずつ新しい定理をハーディー先生のところに持って行ったというんです。

私なんか一年かかってやっと一個か二個ですからね。しかもくだらない定理でね。ラマヌジャンは毎朝六個ずつ、しかも素晴らしいものを持って行ってるんですね。

小川 それがナーマギリ女神のお告げだっていうんですね。自分が見つけたって威張らないんです。

藤原 そう。友達にね、「君、こんなこと言っても信用してもらえないだろうけどナーマギリ女神が夢の中で僕に教えてくれるんだよ。僕は朝起きると言われた通りに書いているだけだよ」ってあっちこっちでいっているわけね。

『世にも美しい数学入門』p.42-43

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ここにも書いてあるとおり、ラマヌジャンは論理的な思考からそういう定理を導きだしたとか、考えついたとかいうのではなく、夢の中でナーマギリ女神さまから教えられたのだそうです。

藤原正彦著『天才の栄光と挫折 数学者列伝』によると、その定理というのが、どうしたらこういうことが思いつくのかがまったく見当もつかず、一流の数学者でも自分の愚かさ加減に腹が立つほどの奇抜さ、美しさだそうです。

しかもいまになって、その定理が科学の最先端の分野で応用されだしているというから、もしラマヌジャンがいなかったら、科学の進歩はそこで停滞していただろうといわれているそうです。

ふつう科学的な発見というのは、時代の要請みたいなものがあって、その人が出現していなくても、何年か先に誰かが見つけていただろうといわれるものが多い中、ラマヌジャンの発見した定理は、そういう時代の要請とかをまったく超越してしまっているものだそうです。

すごいですね。また人間の可能性に大いに勇気づけられるエピソードでもあります。

しかしこのラマヌジャンはなんと33歳で亡くなっているのです。その原因はよく分かっていませんが、彼はバラモン階級で厳格な菜食主義者だったので、あまり体が丈夫ではなかったようです。

前にここでバラモンの菜食主義 について書きましたが、彼らの食事は、私たちが想像するヴェジタリアン食よりさらに制限が厳しく、それ故かラマヌジャンもあまり体調がすぐれなかったようです。

しかし私は逆に、彼が厳格なヴェジタリアンだったからこそ、そのようなナーマギリ女神の言葉を聞くことができたのかもしれないと思うのです。

少し話が飛びますが、ヒーラーをされている木津さんという方がおっしゃるには、スピリチュアルの世界には波長の法則というのがあって、

肉を食べていると、ドブくさいような存在とリンクしてしまうことがあるので、ヒーラーや霊能者で肉を食べる人は信用できないというようなことが彼の著書に書いてありましたが、

ラマヌジャンはその逆で厳格に身を清く保っていたからこそ、そのような高次な精神とリンクできていたのかもしれないと思うのです。


日本の一流の学者でも、「焼肉好きなんですよねぇー」とか「牛丼大好き」なんて発言をしている人を見かけると、あーあーと少しがっかりしてしまいます。

ひとつには、肉を食べることが自然環境や自らの健康にどのような影響を与えているのか知らないことへの落胆であるとともに、

肉を控えたらラマヌジャンのようにもっと精神がクリアーになるのかもしれないのに、、、と思うからです。

肉を食べるにしても、人間から遠い鳥や魚がいいらしいですね。理想は畑のお肉、大豆ではないかと思います。

食べ物の話を書きだすとまた長くなってしまうので、ここら辺でおしまいにしておきます。




参考:

バラモンの菜食主義〔彦兵衛のブログ2008年8/22〕
http://mshiko.blogspot.com/2008/08/blog-post_22.html

バラモンの菜食主義2〔彦兵衛のブログ2008年8/24〕
http://mshiko.blogspot.com/2008/08/blog-post_24.html

木津龍馬著作
http://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_ss_b?__mk_ja_JP=%83J%83%5E%83J%83i&url=search-alias%3Dstripbooks&field-keywords=%96%D8%92%C3%97%B4%94n

藤原正彦『天才の栄光と挫折 数学者列伝』新潮社2002
http://www.amazon.co.jp/%E5%A4%A9%E6%89%8D%E3%81%AE%E6%A0%84%E5%85%89%E3%81%A8%E6%8C%AB%E6%8A%98%E2%80%95%E6%95%B0%E5%AD%A6%E8%80%85%E5%88%97%E4%BC%9D-%E6%96%B0%E6%BD%AE%E9%81%B8%E6%9B%B8-%E8%97%A4%E5%8E%9F-%E6%AD%A3%E5%BD%A6/dp/4106035111/ref=sr_1_16?ie=UTF8&s=books&qid=1238658411&sr=1-16


藤原正彦・小川洋子『世にも美しい数学入門』筑摩書房 2005
http://www.amazon.co.jp/%E4%B8%96%E3%81%AB%E3%82%82%E7%BE%8E%E3%81%97%E3%81%84%E6%95%B0%E5%AD%A6%E5%85%A5%E9%96%80-%E3%81%A1%E3%81%8F%E3%81%BE%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%9E%E3%83%BC%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E8%97%A4%E5%8E%9F-%E6%AD%A3%E5%BD%A6/dp/4480687114/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1238658351&sr=8-1

日本人の独創性〔彦兵衛のブログ〕
http://mshiko.blogspot.com/2009/04/blog-post_02.html

ポアンカレ予想からフラクタル図形へ〔彦兵衛のブログ〕
http://mshiko.blogspot.com/2009/03/blog-post_20.html

ポアンカレ予想から〔彦兵衛のブログ〕

http://mshiko.blogspot.com/2009/03/blog-post_19.html


ラマヌジャン関連写真(『天才の栄光と挫折』より)











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