2008年8月22日金曜日

バラモンの菜食主義

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私は現在ヴェジタリアン(正確にいうと肉はたべないけど魚は食べるペスコ・ヴェジ)ですが、それ以前から食が人間の体と心にどのような影響を及ぼすのかに興味を持ってきました。

前にここで書いたように、ジョン・ロビンズ『エコロジカル・ダイエット』を読んで以来ヴェジタリアンに転向しましたが、それ以外に私が食に関して参考にしてきたものは、

エドガー・ケイシー、ルドルフ・シュタイナー、マクロビオティック、日月神示、長寿研究で有名な家森幸男さん、医師の石原結實さん、そして何度かこのブログでとり挙げた新谷弘美医師やヒーラーの木津龍馬氏などです。

細かくみるとお互いの主張が相容れないところもありますが、概して肉を控えること、野菜を多く取るという点で共通しています。

これは単に体によいというだけでなく、スピリチュアルな観点からもよいそうです。たとえば最後に挙げた木津氏は数万人という患者さんをヒーリングしてきた方ですが、よい食べ物(玄米菜食を中心にした食事、すなわち日本の昔からの伝統食)を食べているとオーラがきれいになっていくのがわかるそうです。そういうことってあるんですね。

オーラがきれいになってくると、健康になってくるだけでなく、スピリチュアルなことにも敏感になってくるそうです。スピリチュアルの法則として波長の法則(類は友を呼ぶ)というものがありますが、肉をガツガツ食べて清らかな波長を維持するというのは難しいのではないかと思います。昔からたとえば仏教僧が肉食を禁じたりしたのは、単に動物を殺すことになるからというだけでなく、やはり経験的に動物を食べることが自分の精神にどのように作用するかを知っていたからだと思います。

肉食をすると攻撃性や性欲が高まると言われますが、私の実感からもおそらくそれは正しいと思います。何か方針を決定するとき、自分の行動の正当性を一見論理的に考えているように思いますが、実はその前に感情があって、理屈は後付けであるように思います。そしてその感情形成の大きな一端を担っているのが、食だろうと思います。

人は食と思いによってつくられる

とケイシーが述べているように、私たちはふだん何を食べるかに気をつけている必要があるのだと思います。


ところで、菜食主義をひとりの人の一生だけでなく何世代にもわたって続けるとどうなるのでしょうか。この疑問にひとつの答えを与えてくれるのが、

大工原彌太郎 著 
『明るいチベット医学:病気をだまして生きていく』 情報センター 1988

です。私はこれを7、8年前に読みましたが、まずこんな日本人がいたのかということに驚嘆しました。著者は日本人でありながらチベット僧として修行をし、さらにチベット医学を学び、インドの地にてチベット医として活動しているという稀有な人物です。

以下は、チベット医である著者がヒンドゥーのカーストにおいて最上位にあるバラモンを診察したときのものです。

インドではかなりはっきりとヴェジタリアンかノンヴェジかが区別され、レストランなどでも看板にハッキリと「Vegetarian」などと表示されますが、バラモンの菜食は更に徹底しています。その悠久の昔から連綿と続いてきたバラモンはいったいどんなだったのでしょうか。

----------『明るいチベット医学』より---------

バラモンは、徹底した菜食主義者です。それも昨日、今日の菜食主義者ではなく、父から子へ父から子へと紀元前から5000年もつづいている血統書付きの菜食主義者なのです。完全な菜食を何千年もつづけていると、その集団の人たちはどういうからだになるのだろうか。

<中略>

菜食といっても、野菜ならなんでもいいというわけではないのです。当初のタブーは肉や卵だけだったのが、やがて地面は穢れているからという理由で、土の中になる玉ねぎやじゃがいも、人参などの根菜類もたべないようになったのです。いまでは地上になるもの、米、麦、野菜、木の実、そして酪農製品ぐらいしか食べるものはなくなってしまいました。当然ながらメニューは極度に限られたものになります。

<中略>

総括的な感想をいえば、みんな、栄養失調で貧血気味です。からだは大きいけれど、やせていて、体力もありません。話をしていても、反応が鈍いというか、手応えがえられないのです。ぼんやりしている人がとても多いのでした。

女性は母体が不完全なので、そういう子供が生まれやすいということもあります。生まれても母乳もあまり出ないし、肉や魚も食べないので、血液や肉をつくるアミノ酸が足りず、正常に発育できないのです。代々同族結婚できたためにそうした障害も起こりやすかったのですが、神聖さを守るために改善の余地もなかったのでした。

歯は犬歯はありましたが、かなり退化して平たく、一般成人にあるべき上下三十二本が揃っていなかったり、虫歯はありませんが、歯ぐきが弱くて、四〇歳を過ぎるとポロポロ抜けてきます。抜けても義歯などありませんから、抜けっぱなしです。そうなると消化力が悪くなりますから、下痢をして急速に弱まります。だいたい四〇歳過ぎると歯が抜け、髪は白髪となり、五〇歳くらいまでに自然死します。

死因はほとんど老衰でした。だいたいが変なものを食べませんし、癌ができるほどの体力もないのです。風邪をひきやすかったり、皮膚が弱くてかぶれやすかったりしましたが、これといった病気はありませんでした。長生きの人もいますが、平均寿命は四〇歳くらいでしょうか。
人間が他の生きものの命を奪わずに限られたものだけを食べて生きていると、寿命はこの程度のものなのかなぁと思います。

性格はみんな穏やかで平和です。怒ったり、争ったりすることはめったにありません。バラモンは怒ることは恥ずかしいとされているからでもありますが、菜食は心を穏やかにするのです。

私もチベット、インドと長く菜食をつづけてきたのでよくわかりますが、菜食をしていると、怒りや悲しみに揺れ動くことが少なくなります。そしてからだが自然環境に近くなるのがわかります。道端の草や木々に親しみを感じ、柔らかそうな若芽を見るとおなかがすいてたまらなくなったりします。自然の変化にも敏感になり、風のそよぎや温度や湿度の変化で天気がわかったり、時計を見なくてもほぼ狂いなく時間がわかったりするようになりました。

バラモンたちは、代々菜食を摂りつづけることによって、ほとんど自然と一体となり、対話できるようなからだになっています。
(p.142-156)

----------引用終了--------------

同族結婚や根菜類を食べないなど、単純に菜食によってこうなったということは言えませんが、やはり著者も述べているように、菜食(というより偏食に近いでしょうか)はあまり体によろしくないように思います。

菜食にするにしてもある程度は幅をもたせて魚や肉もたまに食べたほうがリスクを回避できるのかもしれません。もし肉を食べるにしても、人間から遠い鳥や魚がいいそうです。

またやはり菜食をしていると心が穏やかになってくるようです。次回はここらへんを中心にまたこの本からの引用を載せたいと思います。

参考:
大工原彌太郎
『明るいチベット医学:病気をだまして生きていく』 情報センター 1988

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