2008年8月15日金曜日

博士の愛した加圧式

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前回は『博士の異常な健康』から”鼻呼吸”の重要性を紹介しましたが、今回はこの本でもっとも印象に残ったもののひとつ

加圧トレーニング

について紹介したいと思います。
もうだいぶメジャーになっているようなので知っている方も多いかと思いますが、これは脚や腕の付け根をゴムバンドなどで圧迫し血流を止めた状態でトレーニングするもので、これにより通常の何倍もの効率で筋力が増加するというものです。

腕と足の血流を止めることで成長ホルモンなどが大量に分泌されるそうで、脳をうまくだまし、筋肉が尋常ならざる負荷を負っているかのように錯覚させるらしいのです。開発中は、首を絞めてみるということまでやったらしいですが、やはり無理があったようです。(^_^;)

開発者は日本人ボディービルダーの佐藤義昭氏で、正坐をしていた時の足のしびれからこれが筋肉トレーニングに役立つのではと直観したそうです。 これがいまや単にボディービルにとどまらず、その効率の良さからあるゆるスポーツのトレーニングに採用され、また筋萎縮症や高齢者のリハビリ、痴呆症や糖尿病への治療などといった医学方面にも応用されてきているそうです。

この研究は東大をはじめとする大学レベルで研究され、さらにはあの「NASA」までもが宇宙空間でのトレーニング法として検討しているらしいのです。

いまやこの加圧トレーニングは「KAATSU」として国際的に非常に注目を浴びているようです。(日本をはじめ、数カ国ですでに特許取得済みだそうです)

タレントの「水道橋博士」は、「博士の愛した数式」をもじって「博士の愛した加圧式」と題し、この加圧式トレーニングを実践しているようで、以下は博士による加圧トレーニングの紹介文です。


-----『筋肉バカの壁:博士の異常な健康Part2』-------

それでは、加圧トレーニングについてのおさらいから。短時間で驚くほどの筋肉がつき、アンチエイジング、リハビリにも絶大な効果がある。このトレーニング方法こそ、前作を書いた最大のモチベーションであった。

<中略>

トレーニングは上の写真のように、専用の加圧ベルトを腕・太腿の付け根に巻き、適切な圧力をかけることで、血流を適度に制限しながら、軽い負荷(重さ)で行う。

<中略>

体内では血行が促進され、通常時の100~300倍の成長ホルモンが分泌されるのだ。
「そんなバカな!?」と思われる方も多いだろうが、加圧トレーニングに関しては、東京大学付属病院22世紀医療センターが中心になり、そのメカニズムを分析しており、「KAATSU」という日本名のまま、発明者の佐藤義昭氏が世界各国で特許を取得。現在ではスポーツ界にとどまることなく、その独自の理論がさまざまなフィールドで注目されている。
中でも目覚しい成長を見せるのが、「医療」「美容」「宇宙」の3分野である。


医療分野について
加圧トレーニングは、腰や関節に過度なストレスをかけないので、高齢者にも安全という特徴がある。

<中略>

また加圧をすることで、たまった血流を逃がすために、今まで血液の流れていなかった血管に血流が行くようになり、新たな毛細血管、新たな末梢神経も生まれてくる。そのため、脳障害や各部の麻痺などの改善を目的とした、各領域(循環器系疾患、整形外科的疾患、免疫疾患、うつ、認知症)の治療に応用され、介護予防の現場で新しいリハビリの手段として実績を上げており、実際、加圧トレーニングを治療に取り入れている病院は、増える一方である。


美容分野について

加圧トレーニングを行えば、たとえ高齢者であっても、成長ホルモンが通常時の数百倍近く分泌されるため、アンチエイジングの効果を引き出してくれる。成長ホルモンの減少が、新陳代謝の低下を招くわけだから、当然、ダイエットにも有用だ。


宇宙分野について

これまで1日に2時間半かかっていた宇宙飛行士の筋力維持の訓練も、加圧トレーニングならわずか30分で充分であることがわかった。

<中略>

JAXAが正式採用の判断を下せば、08年春、国際宇宙ステーションに「きぼう」をドッキングさせる際に、加圧トレーニングも持ち込まれる可能性が出てきた。もしそれが実現すれば、間違いなく世界中のメディアで大々的に報道されるはずだ。
(P.38-43)

------引用終了------


加圧トレーニングは、薬を飲んだり、ホルモン注射をしたりするのではなく、あくまで自分の体内からでてくるホルモンを利用しいているので、副作用もなく安全なトレーニング法であるといわれています。

これは画期的な方法だなと思いつつも、少し危険な香りがするような気がします。確かにスポーツ選手や宇宙飛行士の宇宙空間でのトレーニング、病気やリハビリなど、短期間のうちにそれなりの目的があって使用するなら薬と同じで積極的に利用すべきだと思うのですが、特に体に支障のないひとが健康や美容の目的で継続的に利用するのはどうなのかな、という気がします。

新谷弘実さんもアンチエイジングで成長ホルモンを注射することに関して述べていたのですが、成長ホルモンを必要以上に不自然に体に与えるということは、それだけ細胞の分裂を促進するということであり、別の言い方をすれば老化を促進させている可能性があるというのです。

そもそも細胞にはテロメアという細胞分裂に関する回数券みたいなものが組み込まれていて、その券が切れたときに細胞は死ぬようになっているそうなのです。ということは、不自然に大量の成長ホルモンを分泌させるということはその回数券を一気に使ってしまうことに繋がるのではないかという気がするのです。

何年か前にクローン技術で有名になった羊のドリーは若くして老化現象を示し安楽死させられましたが、これはこのテロメアがクローンをとった元の羊のものと同じ長さだったからだといわれています。また逆に癌細胞は、このテロメアを永遠に継ぎ足して増殖していくそうです。

短期間で筋肉がつき若々しくなるからと加圧トレーニングを継続していったら、なんでこんなに若々しいのに死んでしまうのだろう、とドリーと同じことになるのではないだろうか、そんな光景が脳裏に浮かぶのです。

人体はストレッチや体操、軽い運動をするだけでもそれに応じたホルモンがでるようになっています。夜寝る前に軽いストレッチをするだけで、翌日の体調がだいぶ違います。

加圧トレーニングをする前に、自分にあった毎日の運動を習慣化する方が先かな、と私は思うのです。

参考:
水道橋博士(浅草キッド)『博士の異常な健康』アスペクト2006
『筋肉バカの壁:博士の異常な健康Part2』アスペクト2007

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