2009年5月30日土曜日

やはり凄かった日本人!~歌川国芳の浮世絵~〔Ukiyoe by Utagawa Kuniyoshi〕






今年の春から始まった、NHKの「ワンダー・ワンダー」という番組をよくみているのですが、

5月16日に放送された、

浮世絵 よみがえる幻の色


は、圧巻でした。


富山の農家の蔵で、大量の版画の木版が見つかったそうなのです。

それも歌川国芳の浮世絵の原版だったそうで、

そこについていた塗料から、浮世絵の本来の色がどうだったかを再現してみるという番組でした。


上の絵は、復元する前後のものです。本来の絵がどれだけ鮮やかだったかがよくわかります。

他に復元されたものとしては、こんなのもありました↓








この女性の着物の鮮やかなこと。


番組内でメインに取り上げたのは、下の版画でした。

服のデザインに描かれていた鬼がいるのですが、







復元してみると、こんな色だったことが分かったそうです。

しかも多色刷りによって、もとは筋肉がモリモリであったことが分かります。


私は、浮世絵というのは、

有名な絵師がひとりで原画を描き、版画を彫って、刷りあげ完成させるのだとばかり思っていたのですが、

絵師は絵だけを描き、彫り師は彫るのみ、刷り師は刷るだけをやっていたそうです。


今回分かったのは、浮世絵の本来の鮮やかな色遣いだけでなく、それぞれの行程を担当していたプロの絶技でした。

たとえば、彫りの技術なども、髪の生え際は1mmに3本という緻密な線が彫られていたそうです。




しかも女性の髪の生え際に至っては、1mmに6本が彫られていたらしく、

現代の匠をもってしても、再現不可能で、とても人間業とは思えないと語っていました。

凄すぎます。


今回見つかった版画の原版は、富山の薬売りの家で、

薬のおまけとして版画をあげてようと計画していたのが、何かでとりやめとなってしまい、

そのまま蔵に保存され、江戸時代の状態のまま、運よく現代に残されたのだそうです。


しかも蔵の中であったために、外に出回っていた絵のように退色することがなかったそうです。

しかし農家の方は、一部を植木鉢の下敷きや庭の飛び石代わりに使っていたというから、なんとも贅沢な話しです。


ゲストの荒俣さんがおっしゃっていたのですが、江戸は超リサイクル社会で、

版画の原版は何回も使っているとすり減ってくるので、ある程度すり減ったらカンナをかけて次の絵を彫るのだそうです。

そして、それも何回も使って彫れなくなったら、風呂の燃料として燃してしまっていたそうです。


だから浮世絵の版画の原版は現代にはまったく残っていなかったそうで、

今回見つかったことがいかに世紀の大発見であったかがよく分かります。


この回のワンダー・ワンダーの動画があります↓




それにしても、私がこの番組をみて思ったのは、浮世絵師、歌川国芳のデザインの斬新さです。

はじめの巨大な鯉もそうですが、その構図の大胆さ色遣いの派手さ

人物の動きや、デフォルメされた数々のキャラクターなど、暴力的なキラメキをもっています。

日本の文化を述べたものに『菊と刀』という名著がありますが、この国芳の作品は、断然「」に相当するように思います。


しかしすごいのは彼だけでなく、彼の作品に携わった無名の職人たちであり、

またその絵を理解し、支持した江戸時代の民衆であったと思います。


その時代において、ほぼすべての民衆が読み書きが出来たのは、地球上において日本だけだったそうです。

それだけ文化レベルが高かったからこそ、このような作品も理解され、支持されたのでしょう。


しかし私は浮世絵といったら、

葛飾北斎の富嶽三十六景風景や安藤広重の東海道五十三次など風景のものばかりかと思っていました。

今回の番組で初めて国芳の作品を知って、

ンジャレャ!?

と思いました。

(実は前にどこかの美術館で妙に気に入って買った浮世絵の絵葉書があったのですが、

それが
国芳のものであることが今回分かりました。いずれそのこともアップしようと思います。乞うご期待!)


それにしても国芳の浮世絵は、一枚の絵にすべてのストーリーが凝縮され、いまにも動き出さんばかりの迫力があります。

これをみて、日本でマンガやアニメがこれだけ流行するのも当然だなと思いました。

それだけの素地が日本の文化の底流にあったのですね。


しかし、この国芳の浮世絵は、現代の映画やアニメ、マンガなどと比較しても決して見劣りしないどころか、はるかに凌いでいるようにさえ思えます。


今回の番組は色々な意味で度肝を抜かれるとともに、本当に感動しました。

\(^◇^)/ ニッポン、すごいぞぉーーー!!


ネットで色々歌川国芳の絵を探してみました。

是非堪能して行ってください。


讃岐院眷属をして為朝をすくふ図








牛若丸僧正坊隋武術覚図








禽獣図会 大鵬 海老








猫のけいこ







龍宮玉取姫之図








相馬の古内裏








宮本武蔵と巨鯨






参考:

NHKワンダー・ワンダー
浮世絵 よみがえる幻の色
http://www.nhk.or.jp/wonder/program/5/index.html

ワンダー・ワンダーの今回のパズル〔パズルで遊べます〕
http://www.nhk.or.jp/wonder/program/5/movie.html

歌川国芳〔ウィキペディア:他に色々な絵を見れます〕
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%8C%E5%B7%9D%E5%9B%BD%E8%8A%B3

Utagawa Kuniyoshi〔Wikipedia〕


1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

民俗学、特に宮本常一を勉強されるとより一層当時の日本の「真相」を知ることができますよ。