2012年12月6日木曜日

ブロークンウィンドウ理論とは、、

 
 
前回の続きで、、、

リスクマネージメントの仕事の中で、
 
施設内の危険個所をチェックし、危険度の高い順にランク付けするという仕事がありました。
 

その中で壁の破損など、特に危険度は高くないけど、なるべく早めに修繕しておいた方がいいのでは、、、

ということを提案するのに、

ブロークンウィンドウ理論

を紹介させて頂きました。


ではブロークンウィンドウ理論とは、、、

ブロークンウィンドウ理論 Broken Windows Theory)とは、
 
軽微な犯罪も徹底的に取り締まることで
凶悪犯罪を含めた犯罪を抑止できる、
 
とする環境犯罪学上の理論で、アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングが考案しました。


建物のが壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴になり、
 
やがて他の窓もまもなく全て壊される
 
との考え方からこの名がつけられました。他に割れ窓理論(われまどりろん)等ともいいます。
 

割れ窓理論とは次のような説です。

治安が悪化するまでには次のような経過をたどります。


 1.建物の窓が壊れているのを放置すると、

それが「誰も当該地域に対し関心を払っていない」というサインとなり、犯罪を起こしやすい環境を作り出す。

 2.ゴミのポイ捨てなどの軽犯罪が起きるようになる。

 3.住民のモラルが低下して、地域の振興、安全確保に協力しなくなる。それがさらに環境を悪化させる。

 4.凶悪犯罪を含めた犯罪が多発するようになる。
 

したがって治安を回復させるには、このをやるのです。


 一見無害であったり、軽微な秩序違反行為でも徹底的に取り締まる(ごみはきちんと分類して捨てるなど)。


 警察職員による徒歩パトロールや交通違反の取り締まりを強化する。地域社会は警察職員に協力し、秩序の維持に努力する。
 

≪ニューヨークの例≫

 私が初めてこの理論を知ったのが、ニューヨークの例でした。
 
かつてニューヨークは犯罪が多発する都市だったのですが、
 
地下鉄の落書きなどを徹底的にキレイにすることなどで、凶悪犯罪が激減したということでした。
 

ニューヨーク市は1980年代からアメリカ有数の犯罪多発都市となっていたが、

1994年に検事出身のルドルフ・ジュリアーニが治安回復を公約に市長に当選すると
 
「家族連れにも安心な街にする」
 
と宣言し、ケリングを顧問としてこの理論を応用しての治安対策に乗り出した。

 
彼の政策は「ゼロ・トレランス(不寛容)」政策と名付けられている。

具体的には、警察に予算を重点配分し、警察職員を5,000人増員して街頭パトロールを強化した他、

 落書き、未成年者の喫煙、無賃乗車、万引き、花火、爆竹、騒音、違法駐車など軽犯罪の徹底的な取り締まり

ジェイウォーク(歩行者の交通違反)やタクシーの交通違反、飲酒運転の厳罰化、

路上屋台、ポルノショップの締め出し、 ホームレスを路上から排除し、保護施設に強制収容して労働を強制する

などの施策を行った。


そして就任から5年間で犯罪の認知件数は殺人が67.5%、強盗が54.2%、婦女暴行が27.4%減少し、治安が回復した。
 
また、中心街も活気を取り戻し、住民や観光客が戻ってきた。

 
≪日本の例≫
 
2001年に札幌中央署が割れ窓理論を採用し割れ窓を違反駐車に置き換えて、すすきの環境浄化総合対策として犯罪対策を行った。

 具体的には北海道内最大の歓楽街のすすきので駐車違反を徹底的に取り締まる事で路上駐車が対策前に比べて3分の1以下に減少、

 併せて地域ボランティアとの協力による街頭パトロールなどの強化により2年間で犯罪を15%減少させることができた。

 
ビジネス界の例

ビジネス界において、割れ窓理論を適用して成功を収めている例がある。

日本・東京ディズニーランド・東京ディズニーシーでは、ささいな傷をおろそかにせず、ペンキの塗りなおし等の修繕を惜しみなく夜間に頻繁に行うことで、従業員や来客のマナーを向上させることに成功している。

 アメリカのデパートチェーン、ノードストロームは、単に傷を治しておくという消極的対策だけでなく、「割れ窓」の対極である意味合いピアノの生演奏を顧客に提供するなどして、成果につなげている。

 
(以上参考:割れ窓理論 - Wikipedia
 
 
 
このように、壁の破損やゴミの放置など、一見なんでもないものでも、その放置が重大犯罪へ繋がりうるで、
 
リスク箇所ではありませんが、セキュリティーの面では大切なので早めに修繕した方がいいと提案したのでありました。
 
またこれは、職場において、知らない人に対しても積極的に挨拶するなども、この理論の範疇なんだろうな、という気がします。
 
 
そしてこの理論は、単に職場だけでなく、私たちの家などにおいても同じなのです。
 
外からの見た目をキレイにしておく家の前の通りを綺麗にしておくなどは、
 
小さな事ではありますが、とても重要なことであることがわかります。
 
テレビでかつて空き巣だった人のインダビューなどを聞くと、

外からみて雑然としたような家をターゲットとするというようなことを言っていたのを思い出します。
 
 
ここで面白いのは、前回あげたハインリッヒの法則との共通点です。
 

ハインリッヒの法則においては、ピラミッドの最下層にアクセスすることで、ピラミッドの上の部分を減らそうとするものですが、
 
 
 
 
このブロークンウィンドウ理論も、ピラミッドの最下層に徹底的に対処することで、

上部のより重大な犯罪をなくしていこうとするという点です。


何か大きなことを成そうとするのに、初めっから大がかりな事をしようとするのではなく、

基礎をなしているところをコツコツ処理していくことが、

結局大きなことを成すことにつながるという事なのだと思います。


年末年始、家を空けることなども多いと思いますが、

どうぞこのブロークンウィンドウ理論を思いだして頂いて、少なくとも家の外見だけは(笑)、

キレイにしておきたいものであります。


 おしまい


 
 参考:

割れ窓理論 - Wikipedia

 
 
 

2 件のコメント:

なんじゃもんじゃ さんのコメント...

リスクマネージメントは、

皆に、良く理解して貰い・納得して貰い・想定外のリスクが発生しないように、

毎日の中で粛々と当たり前の様に実行して貰わなくては成らないので、本当に大変ですよね。

でも、組織が存在するための根幹である事は間違いないですよね。

そして、組織的実践が功を奏して何事も起こらない様に実践される様に成ったとしても、

自分たちの実践によって支えられていると感じるのでなく、

必ず、こんな事に時間とお金をかけて手間を取る必要は無いのではと声高に唱える人が出てきて、

トップの意識が薄い組織の場合は、元の木阿弥になってしまう事が多いですね。

卑近な所で、身近な物では、原発の件、トンネル天井落盤事故の件などを見ても、

そんなにおいがプンプンしていますよね。


この世の中で発生した危険を自分自身の危険として考え研究して、

いかに対応すればそれなりに回避できる可能性が高くなるか、勉強し実践するようにすれば、

少ないコストでリスクを回避する体制作りが出来るのですが、

残念ながら、大部分の人々は、人事としてしか受け止めず、

自分の身近な所で実際に血を見ないとその様な行動に移らないのだなと言うのが、私の正直な気持です。

本当に残念ですが、これは事実です。

又、この様な危険回避の体制が、旨く確立して行けば行くほど、大切な事が、

担当の人の独り善がりな発想だけにならないように配慮し、

一般の人々が、自ら率先して、
どんどん危険予知を楽しみながら危険回避の為の発想をし、

アイディア出してくれる環境を醸し出して、それを積極的に取り入れて行く事だと思います。

なかなか難しい事とは思いますが、

マニュアル化したものに従いさえすれば良いと言うように成らず、常に皆が考え、

皆が意識を持つ雰囲気が大切なのではないでしょうか。

大変でしょうが、どうか頑張られてください。

なんじゃもんじゃ さんのコメント...

ブロークンウインドウー理論効果を意識して、日々の身近な事を観察すると、本当に納得できるし、悪い方へのスパイラルの防止に役立っていると感じて、私はなるべく粛々と実行するようにしています。

人間の行動の心理学的分析とは、凄いなとも思います。

もっともっと積極的に社会の中でこの効果が認知・実践されるようになると、コストの低くて済む予防の段階で、高い効果が上げられるのではと思います。

病気を予防に金と時間をかけるか、治療に金と時間を掛けるかというテーマとも良く似ていますよね。

コストを掛けずに、世の中に良いことが出来る様にする為には、皆で意識を高くして、日々実践努力する事に尽きるのではないでしょうか。