2009年3月7日土曜日

乳がんと牛乳【Part.9:最終回≪科学の問題点≫】


本日図書館に行く途中で、花の咲いている桜の木を見つけました。


しかもこの桜、あり得ないぐらいの花を咲かせていました。

下の方はもうすでに葉桜でした。新緑と花のピンクが美しい。


地面にはもうかなり花びらが落ちてます。まだ小さい木なのに一本だけで咲き誇り、 ここだけ不思議な空間になってました。


さて、今回で『乳がんと牛乳』を取り上げるのも最後となりました。

本日は、前にも少し触れた、科学の本質的な問題、再分化・専門家する事の弊害を本書から取り上げたいと思います。

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▼科学はなぜときに人間の幸福につながらないのか

大学で科学について講義するとき、私は、科学を

1本の大きな樫の木

に見立てるようにと、学生に言うことにしている。お好みなら、この樫の大木を

学問の樹」と呼んでもよい。


まず、地中深くどこまでも伸びる根の最先端から考えよう。ここは、たくさんの新しい事実が昼夜をわかたず発見されているところである。これらの新しい発見が集まって少し太い根になる。

それがだんだん集まって、やがて1本の太い幹となる。ここの小さな情報が集まって新しい知識となり、新しい理論を生み、ときには飛躍的な大発見となる。

<中略>

幹に集まった新しい知識はやがてとなり、最後にはとなり、世間一般に知れわたって利用される。

<中略>

現在では、最大の関心と資源のほとんどが、細い根の最先端で行われている研究に集中している。このような研究は最先端の技術を用いて行われ、莫大な費用がかかる。

このような最先端の研究を積み上げてゆく方法をボトムアップ科学(反対後はトップダウン科学)と呼ぶこともある。

<中略>

この数十年のあいだに科学のいろいろな分野で起こったことを端的に表すひとつの言葉がある。最近ますます侮蔑的な響きをもつようになった「還元主義」という言葉である。

現在の、ハイテクを駆使する還元主義科学がもたらすことを一文で表現すると、

「ますますたくさんの研究資金を注ぎこんで、成果がますます小さくなっていることが、ますますよくわかるようになった」ということになる。

<中略>

典型的な喩えは「木を見て森を見ず」である。

がん研究に関連して言うと、研究者の多くが、がんの発生過程の全体を見ようとせずに、細胞生物学だの分子生物学に頼って、ますます細かい部分 ―単一遺伝子あるいはそれがつくる単一タンパク質― にわけいっている。

研究が細分化されると、他分野の研究者が理解できない、ある分野だけに通用する特殊用語がとびかうようになる。このような細かい専門分野の研究は、その成果を享受すべき社会の役にあまり立たない

ビジネス用語で言えば、巨額の投資の割には利益が少ないということだ。がん研究がビジネスであったなら、株主はとっくの昔に経営陣を追放し、経営戦略のみなおしを迫ったことだろう。

<中略>

還元主義研究の流行にはさらなる問題がある。この研究体制が行きわたっているために、観点を異にする研究を行うことがむずかしくなってしまった。

すなわち、樫の木の幹の上方でなされるべき研究が行われなくなったのである。言い換えれば、今まで行われてきた、あるいは現在行われている研究を分析し、吟味し、総合するという研究が行われなくなってしまったのだ。

このような研究はきわめて不人気である。他人の研究を評価するなどという研究は創造性のかけらもないし、ボトムアップ研究のような鋭さもないと考えられているからである。このような研究に与えられる賞や名誉はほとんどないし、研究資金だってほとんど得られない。

がんに関する還元主義研究の隠れた目的は「魔法の弾丸」をみつけることにある。「魔法の弾丸」とは、一発でがんを退治する究極の「仙薬」である。

現代の「仙薬」は、構造や反応が明らかである純粋な化学物質で、服用すればがんがたちまちのうちに完治するというものだ。

いつかはこのような「仙薬」がみつかると信じている人もいるだろう。しかし、「仙薬」はそもそも魔法であって、実在しない幻だから、いかに多額の資金を投入し、いかに膨大な研究を行っても「魔法の弾丸」をみつけることは永遠にできないだろう。

単なる幻に何十年という歳月をかけて多額のお金を無駄遣いし、そのあげく多数の命が失われていく。

-----------引用終了--------------



科学は漢字を見てもわかるとおり、分科(分化)してゆく宿命をもった学問です。scienceの語源もラテン語のスキーレで、「切る、知る」を意味します。


プラント博士が指摘しているように、学問は細分化していくだけでは片手落ちで、それら「学問の樹」における根の最先端で得られた知識を統合・総合する視点も同時に必要で、今日この部分が大きく欠落しているのではないかと思います。

少し本質に戻ってシンプルに考えれば、莫大なコストをかけるまでもなく解決することが多々あるように思います。その一つが病と食に関することだと思います。

分化統合、この二つの作用がバランスよくなされて初めて社会の役に立つ科学研究になるのではないかと思うのです。

本日たまたま桜の木の写真を載せましたが、根の先端、幹、枝、葉がバランスよく成長し、今日撮ったような満開の花が咲くような社会になったら素晴らしいなと思います。


統合・総合と言う事の重要性に関して、かの有名な建築家アントニオ・ガウディが面白い言葉を残しています。いずれ彼の言葉をこのブログで取り上げようと思います。

今回はここら辺で。



2 件のコメント:

Holly Michele さんのコメント...

Your Cherry Blossom trees are so beautiful. We have some in a city not far from where I live, called Macon, in the state of Georgia. They were a gift from Japan. Each year the city of Macon has a Cherry Blossom Festival, it is one of the highlights of the year. It ushers in the Spring for us here in the south. Thank you for sharing your blossoms with the world! I enjoyed looking at them.

~Sincerely~
Holly

彦兵衛 さんのコメント...

To Holly Michele

Thank you for your comment. But how did you find here? It’s amazing!
I write this only in Japanese. Do you read Japanese?

Anyway today’s blog is not about Cherry Blossoms. I happened to find this tree on the way to Library.

Normally Cherry Blossoms are in full bloom at about the beginning of April in Japan. So I was surprised to see this tree and took pictures.

Today’s blog(part9) is the final comment on the book

“Your Life in Your Hands” written by Professor Jane Plant.

http://www.amazon.com/exec/obidos/search-handle-url/ref=ntt_athr_dp_sr_1?%5Fencoding=UTF8&search-type=ss&index=books&field-author=Jane%20Plant

You seem American, so I wanna ask you something.

Do you know this book? Have you read this? If you have any comment on this, please let me know.

Thank You