2009年11月24日火曜日

立花隆氏とガン



昨日のNHKスペシャル

立花隆 思索ドキュメント
がん 生と死の謎に挑む


というのをやっていました。

なんと立花隆さんが2年前に膀胱がんになり、

いい機会だから自らの治療の過程や最新の癌研究の現場をリポートしないかとNHKに打診してきたのだそうです。

自分の病をドキュメンタリーの対象としてしまうというのは、さすがジャーナリストだなと感じました。

立花さんの膀胱がんは、早期であったため転移などもなく、手術によって摘出して、いまのところ再発はないそうなのですが、油断はならないそうです。

立花さんはこれを機会に、世界中のガンの最先端の研究者たちにインタビューをし、

ガンとは何なのか、ガンをどうやったら克服できるのかを取材していました。

結論から言うと、ガンとは私たちそのものであり、ガンの根本的な治療というものも今のところないそうです。

つまり、ガン細胞は誰の身体の中でも常にできているもので、正常細胞とそう変わるものではなく、

ガン細胞と正常細胞を完全に区別するのは極めて困難なことなのだそうです。

最新の研究によると、正常細胞を支える諸々の機能が、ガン細胞を助けていることが分かってきているのだそうです。


従って、様々なガンに対抗する薬を開発しても、それは常に正常な細胞をも殺してしまうことにつながり、それが副作用として現われるのだそうです。


ある研究者は、ガン細胞は幹細胞に近いということを発表しているそうです。

つまり生命の根幹に関わる原始の細胞そのものと同じ構造をしているので、

ガン細胞のみを識別して殺すことなどそもそも不可能なのではないかとうことのようです。


放送の中では、研究室の中で50年間生き続けるガン細胞が紹介されていましたが、ガンはまさに不老不死で、増殖をし続けるもののようです。

でもこれは考えてみると、
まえにブログでもとりあげたように、もともと生物は不老不死であったことを考えてみると、

細胞が先祖がえりを起こして、その本来持っていた機能を取り戻したといえなくもないように思います。


ガン細胞の機構というのは、分子レベルで相当に分かってきたようなのですが、その模式図をみると、あまりに壮大かつ複雑で、

研究者自身もこれ全体を把握するのは不可能だといっていました。

まるで宇宙図のような複雑な経路になっているのです。


アメリカがガンに対する戦争を宣言してほぼ40年経つそうですが、

ガン治療に対する状況はあまり変わらず、ガン患者は増加の一途をたどっているそうです。


私はこのアメリカが発したガン戦争というスローガンに、昨日講演で聞いてきたばかりのアフガニスタンの状況が重なりました。

ガンは本来正常な細胞が突然ガン化して、人体を蝕んでいくものですが、ガンをとしてこれに打ち勝ち、勝利するという発想は、

アフガニスタンで、テロリストを掃討して平和をもたらそうとするという発想と通じるものがあるように感じるのです。

その根底には、悪と正義の戦いという二元論的な発想があり、正義が悪を駆逐するというイメージなのでしょうが、

もしかしたらその発想自体が間違っているんじゃないか、と強く感じたのです。

というのも、アフガニスタンにおけるテロリストは誰か?

というと、実は米軍が誤射、誤爆によって遺族を亡くした一般市民であり、無辜の市民であった彼らが報復のためのテロリストになっているのが現状なのです。

したがって、市民とテロリストを分かつことなど不可能なのであって、それを悪を排除するという考えで推し進めていっても、泥沼にはまっていくだけのように思うのです。

どうもこの構造が、ガンを敵として戦うという発想と同じなのではないかと感じてしまうのです。

そしてもしかしたらこれは、科学がもっている「物事を分割してとらえる」という分化の発想そのものに問題があり、

これが現代の文明に問題を生じされていることとパラレルなのではないかとも感じるのです。


あまり話しを拡大しても収拾がつかなくなるので、話しをガンのことに戻すと、

このブログでも再三とりあげてきたように、ガンのもっとも大きな要因は"食"の習慣にあるように思われます。

肉、乳製品、お酒、砂糖などカロリーの高いもの欲に任せて好きなだけ食べ放題に食べ、

一方でガンになってから薬で治そうとするのは、まるでアクセルとブレーキを一緒に踏んでいるようなもので、とても滑稽に感じます。

最新の研究でもわかってきているように、ガンとはそもそも私たちの細胞そのもののようで、人体内で常に生じているものです。

したがってそれを攻撃して殺すという発想ではなく、

そもそも正常細胞をガン化させないようにする

ガンが生じてもそれを爆発的に増殖させないような体の自然な機構を育むといった方が大事なのではないかと思うのです。

正常細胞をガン化させない習慣を身につける、そうした知識を一般に啓蒙していくということの方が大切だし、お金もマンパワーもずっと少なくて済むと思うのです。


今回の立花さんのレポートは、最先端の分子レベルの研究ばかりに焦点をあてるものでしたが、

もっとマクロに、人間全体を見る視点というのがあるべきではなかったのかと思い、少し残念に感じました。

どうしてこれだけ情報があり、疫学的な研究も進んでいるのに、

多くの人がミクロな方向にばかり注目し、莫大なお金をつぎ込むのか、とても不思議でなりません。

少なくとも自分と、身の回りの人ぐらいには、

食とガンにどのような関係があることがわかってきているのかを伝えていけたらと思っています。


おしまい






参考:

2009年11月23日(月) 午後10時00分~11時13分
総合テレビ

立花隆 思索ドキュメント
がん 生と死の謎に挑む

乳がんと牛乳──がん細胞はなぜ消えたのか

がんに効く生活―克服した医師の自分でできる「統合医療」


2 件のコメント:

なんじゃもんじゃ さんのコメント...

私もこのテレビ放送を見ました。

人間の持っている本来の機能を毎日の生活の中で充分使い、又、生活の豊かさと言う言葉に踊らされる事無く足元を見ながら生活すると言う事が大切だなと感じました。

言い直すと、何時死んでも悔いの無いように、毎日の生活の人間性を大切にして生きると言うことなんだなあと。

彦兵衛 さんのコメント...

なんじゃもんじゃ さん コメント有難うございます。

立花隆さんも、最後の方で言ってましたね。

ガンと闘って数か月延命するぐらいなら、生活の質(QOL)を保ったまま最後までガンとともに生きると。

でも自らの生活を見直して、ガンの要因と考えられるものを減らしていく、

ガンを抑制する生活習慣を増やしていく、ということは最低限出来るのかなと思いました。

番組の中で、現在二人に一人がガンになり、三人に一人がガンになって死ぬと言っていましたが、今はそこまで数値が上がってきてるんですね。

年末ジャンボで行列をなして、一等に当選することを夢想するのもいいのですが、

一等に当たるのは数千万分の一、一方ガンに当選する確率は二分の一です。

この現実をよく見据えて、毎日の生活を振り返ってみる必要があると思うのです。