2010年2月23日火曜日

浅田真央とキム・ヨナ ~淀みと流れ~



明日からいよいよ注目の女子フィギアが始まります。

それに合わせて、数日前にNHKスペシャルで、

浅田真央 金メダルへの闘い
http://www.nhk.or.jp/special/onair/100221.html

という番組を放送していました。


その中で、浅田真央選手キム・ヨナ選手が取り上げられていたのですが、

ふたりのあまりの対照的なあり方に唖然としてしまいました。


浅田真央選手の方には、コーチとしてこれまでにメダリストを十何人も育ててきたロシア人コーチ





がついているそうです。


彼女が指導をしている場面が写されていましたが、








見ていて踊っている様子があまり楽しそうではありませんでした

エネルギーが流れていないというか、心が動いていないので体も縮こまり、演技が淀んで見えました。


なぜコーチがこのような指導をするかというと、浅田真央選手自身が、暗くて重厚感のある曲を選んだためです。

その曲は、




帝政ロシア末期の抑圧された民衆の心の叫びをテーマにした"前奏曲 鐘"というものです。





聞いていてとても重苦しく、外国人記者からも次のように質問されていました。




これに対して浅田選手は、

音楽を選ぶ時点で華やかなのと重厚な曲のふたつがあったが、

この曲を聞いたときに、力強い滑りが出来る気がしたのでこちらにした、と語っていました。


一方のキム・ヨナ選手がチョイスした曲はというと、




誰でもが知っている007のテーマ曲です。





キム・ヨナ選手自身、この曲に乗って滑れば滑るほど好きになると語っていました。

彼女をコーチしているのは、カナダ人で、




彼の戦略は、他の多くの選手がクラッシックを踊っている中、

皆が知っていて心弾むような音楽を流すことで観客を沸かせ、審査員に印象づけるのだと語っていました。


私はこの二人のあまりに対照的な選曲に、競技をする前から相当の差が開いてしまっているな、と感じました。

誰でも、軽快でノリのいい曲を聞くと、体が自然に動き出すという経験をしたことがあると思いますが、

ダンスによる表現力や、回転などの高い技術力が求められる場面で、

どちらの曲が有利かは言うまでもないことです。

しかも皆が知っていて共感できる曲というのは、観客もノッてくるので観衆からの力をもらえるのに対して、

浅田選手が選んだような曲だったら、ほとんどの人は知らないし、心がふさぎこんでくるので、

まず観客から力がもらえるということは期待できないように思います。


また審査の芸術点などは、もちろんパフォーマンスを見て決めるのでしょうが、主観の部分が大きく、

ノリノリの曲で鼓舞された方が、やはり点をつけたくなるものなのではないでしょうか。

そういう意味で、浅田選手の戦いはそうとう厳しいものになると私は感じました。


上にあげたポイントをまとめると、、、

浅田真央選手:曲が暗い、自分の体が重くなる、観客もノってこない、評価する側を鼓舞できない

キム・ヨナ選手:曲が明るく軽快かつ誰でも知っている、自然に体が動いてくる、観客もノってきて力をもらえる、評価する側を鼓舞できる


細々とした技などの前に、もっと土台となるこのような基本的な事柄はしっかり押さえておくべきなのではないか、、

とこういう競技を見るにつけ思うのです。


たとえば、前回のオリンピックで金メダルをとった荒川静香選手は、自分の競技前にはずっとアイマスクをして、自分の好きな音楽をヘッドホンで聞いて、

前の選手がどのような結果を出したかなど気にしないようにしていたといいます。

こういうことがいい結果につながるとわかっているなら、当然オリンピック代表選手の中で次の世代にも生かされているのかと思いきや、

フィギア男子の小田選手のコメントに、前の選手のパフォーマンスの最中に聞こえた観衆の声援に足がすくんだ、と言ってたのを聞くと、

荒川選手が実行して良かったことがオリンピック選手の中に受け継がれていないということになのでしょうか。

こういう心理的なものってものすごく大きいはずなのに、どうして生かされないのでしょうか。


あとたとえば、野球の日本代表と、サッカーの日本代表が比べられることがよくあります。

サッカーの代表がいつも大事な所で力を発揮できないのは、そのユニフォームの色に一因があるのではないかと私は思ってきました。

野球の日本代表のユニフォームは、理知と落ち着きをあらわす紺情熱や闘志をあらわす赤のラインが入っています。

それに対して、サッカー日本代表は、ほとんど青一色です。

青は冷静さを保つにはいい色ですが、逆に闘志をかき立てるような色ではなく、ココ一番というところで心が萎えてしまう可能性があります。


逆にサッカーの韓国代表は常にですが、野球の代表の方は西部ライオンズのようなブルーなんですよね。これは面白いです。


曲を味方につける、眼隠し・耳をふさいで、相手のことを気にしないで自分の最高のパフォーマンスに心がける、ユニフォームの色を改善してみる、

など些細なことでしょうが、人間は心が基本となって体が動くので、

心をどうやって鼓舞し、集中力を維持するかという細かなスキルはちゃんと競技前に準備しとくべきで、

それらを完璧にしたうえで技術を磨いていかないと、そういった土台、基本の部分が高度な技術の足を引っ張ってしまうことになるように思うのです。

スポーツ心理学ってちゃんとあるはずなんですけど、あまり普及していないのでしょうか。

こういうところにしっかりと焦点を当てて体系化し、トレーニングを積んでいる国は、そうとう強いと思います。

日本のオリンピック代表も、こうした知識を蓄積、体系化して、選手全体にいきわたらせるべきだと思うのです。大学でいう一般教養科目です。

そしてそのような知識は、競技者だけでなく、実は私たちにもあてはめることのできる、日常生活にも応用できるスキルだと思うのです。

国の代表として選手を送っているわけだから、単に勝ち負けだけでなく、

勝負に臨む上でどのような心がけが大切なのか、どのようなことが役に立つかを、出来たらこちら側に還元してほしいと思うのです。


さて今回のNHKスペシャルは、

浅田真央 金メダルへの闘い


という題でしたが、どういう結果になるのでしょうか、、、

音楽、パフォーマンス、観客の湧き立ち具合も含め注目したいところです。


おしまい





参考:

NHKスペシャル:浅田真央 金メダルへの闘い
http://www.nhk.or.jp/special/onair/100221.html



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