誰の体内にもあるサーチュイン、これを活性化させるにはどうしたらいいのでしょうか。
そのヒントは70年前の研究にすでにあったそうです。
それはマウスの栄養と寿命に関する論文でした。
この研究によると、カロリーを制限すると、マウスの寿命が延びることが分かったのだそうです。
それと同じことが人間にも見られました。
第二次世界大戦中、ストレスによって心臓病で早死にする人が増えると誰もが予想していたそうです。
しかし実際のところ、心臓病で死ぬ人は2割減ったのだそうです。(このことはエコロジカル・ダイエットでも紹介されていました。)
研究者たちは、戦時下のカロリー制限によって、
心臓病になる人が減ったのだと考えましたが、科学的な証拠はありませんでした。
しかし近年、それを裏付けるような研究結果がでたそうです。場所はアメリカ、ウィスコンシン大学。
ここでは、76頭のアカゲザルを20年にわたって飼育し、カロリーの違いが個体にどのような影響をもたらすかを研究してきました。
こうして育てられたカロリー制限をしなかった個体は外見はこんな感じ↓
カロリーを30パーセント減らして育てた個体はこんな感じ↓
同年齢の2匹を並べて比べ見ると、その違いは一目瞭然です。
この20年間の研究成果が、去年2009年、サイエンスに発表されました。
それによると、カロリー制限なしで育てた方はすでに半数が死んでしまったにもかかわらず、
カロリー制限をしていた個体は8割がまだ生きているのだそうです。
ではカロリー制限をすることで、なぜ長寿がもたらされたのでしょう。
マサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテ博士は、カロリー制限をしたネズミの組織の中のサーチュインタンパクの量を計測したところ、
各臓器の中で、カロリー制限をしていた方はサーチュインタンパクが多かったのです。
つまり、カロリー制限をすることはサーチュインの活性化につながり、それが、ガンや糖尿病、動脈硬化などを防ぎ、長寿をもたらしたと考えられるのだそうです。
これは生体が栄養の少ない過酷な環境をなんとしても生きぬき、子孫を残そうとする働き、
つまり生物の生き残り戦略としてこのような機能が生体に備わっているのではないかと推測されているそうです。
番組内では、他に赤ワインにもサーチュインを活性化させる効果があることが紹介されていましたが、
その効果を得るためには、赤ワイン100杯だったかの量を一度に摂取しなければならないとのことで、まったく健康からは程遠いということだそうです。
他に薬を飲んでサーチュインを活性化させるなどが検討させているそうですが、まだ研究段階だそうです。
昔からたとえば日本でいえば貝原益軒の『養生訓』などにも
食事は腹八分なんてことがいわれてきましたが、少食が体に良いことは昔から経験的に言われてきました。
しかし今回のように科学的な見地、分子的なレベルから裏付けられたというのは画期的なことだと思います。
現代の先進国においては、あまりに飽食が進み、それによって様々な病が発生しているわけですが、
その病の根本である食事を制限するのではなく、飽食のまま薬や手術で対処しようという本末転倒なことがなされています。
今回のような研究が、健康の本質である人間の正しい食のあり方を見直す上で大いに参考になるだろうと思います。
ただし食べるということは、単に「栄養をとる」ということ以上に、「楽しむこと」でもあるので、
何が何でも量を減らさなければというのもまた問題だとと思います。
毎食、毎食、好きなものを好きなだけ食べるというのではなく、ここで発表された結果を念頭に置きながら、
なるべく控え目に食べるように心がけるというだけで相当違ってくるだろうと思います。
また食事の内容も、カロリーの高い肉・乳製品などを減らして、野菜にシフトする、砂糖やお酒などを控え目に摂るというように心がけるだけでもだいぶ違うと思います。
今回ゲストとして招かれた札幌医科大学の堀尾嘉幸教授(サーチュインの研究者)によると、
サーチュインというのは生体の中で指揮者のような役割を果たしているといいます。
様々な器官、組織からなる体全体をオーケストラに譬えるなら、その全体を指揮、統括するのがサーチュインのようです。
そしてそのサーチュインは少食によって発動するというなら、この機能を活用しないなんて宝の持ち腐れのようなものです。
前に紹介したように、何代にもわたって極端なベジタリアンを続けてきたバラモン階級のひとたちのようになると、また逆に体に支障をきたすと思いますが、
現在の食事から、肉・乳製品を減らして野菜を多くするぐらいなら、まったく問題ないと思います。
その時大事なのは、野菜もなるべく全体を食べる、
たとえば米なら玄米、パンもなるべく全粒のもの、砂糖を使うなら、精製していないブラウンシュガーを使う、
大根などは葉っぱもたべるなど、などの気配りが必要だと思います。
こうやって正しいことが科学的にだんだん明らかになって来るというのは、嬉しい気がします。
栄養や運動・健康に関する知識は、新たな発見があって、どんどん新しくなっている側面もあるので、
このような知識には常に耳を傾けておきたいと思っています。
結局、日々の小さな積み重ねが、10年、20年後にあらわれてくるので、毎日行う基本的なことがらは大切にしていきたいと思っています。
おしまい
参考:
サイエンスゼロ:長寿遺伝子が見つかった!
http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp290.html
日経サイエンス:特集:長寿の科学
「長生き遺伝子」の秘密を探る
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0605/aging-sa.html
バラモンの菜食主義〔彦兵衛のブログ〕
http://mshiko.blogspot.com/2008/08/blog-post_22.html
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養生訓―全現代語訳 (講談社学術文庫 (577))
葬られた「第二のマクガバン報告」(上巻)
エコロジカル・ダイエット―生きのびるための食事法
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