2009年9月6日日曜日
集団同調性バイアス
先日のためしてガッテンで、災害の対策についてやっていました。
地震!台風!集中豪雨 災害で死なない新技術
この回の中で面白いエピソードが紹介されていました。
それは東北地方で地震が起こった時のことです。
ある人が、海が遠方まで引いたので津波が来るから逃げなくては、と頭では分かっていたのに、
海岸を通ると、何人かの人が引き潮であらわになった海底からウニを取っていました。
その光景を目にしたその人は、
自分も取らなければ、
と逃げることを忘れて、ついウニ取りに夢中になってしまったというのです。
彼は、津波が見えだして初めてあわてて逃げ、結果的にはなんとか助かったのだそうですが、
その人自身はなんとウニは好きではなく、そのときバケツ一杯とったウニも、近所の人などにあげてしまったというのです。
なぜこのようなことが起こったのでしょうか。
それは多くの人が何かをしていると、
「自分も一緒にしなければ損をしてしまう」
という思いが生じ、ついみんなと同じことをしてしまうのだそうです。
このような人間の行動は
集団同調性バイアス
と呼ばれるそうです。
私は以前にこのブログで、花火見物での事故について書きましたが、
みんなが同じことをしているからそれに従ってしまうというのは、まさにこの集団同調性バイアスそのものです。
かくいう私も恥ずかしながら似たような経験をしたことがあります。
私がダラムサーラにいたときのことでした。
あれは確かチベットの正月(ローサー)で、ダライ・ラマの寺院でダライ・ラマ法王による説法があったのを聞きに行ったときでした。
説法の後に、お寺で供物として供えられていたものを聴衆の人たちに配り始めたのですが、
チベット人たちはご利益があるからと、我先にそれを貰おうと配っている僧侶のところに詰め寄るのです。
私はそんなもんもらったって幸福になるわけじゃないよ、と冷ややかな目で見ていたのですが、
供物を配る僧侶が私の近くに来て、供物を配りだすと、
まわりのチベット人たちの行動につられて、つい私も体が動いて供物を貰おうとしていたのです。
結局その時の供物はまたたくまになくなり、私の手の中に入ることはなかったのですが(笑)、
あとで、なんであのとき咄嗟にあんな行動にでてしまったのか、随分考えました。
そして結論としては、人間は集団でいると自分の意志とは違う別の力が働いて、周りの人とつい同じ行動をとってしまうということでした。
それ以降、私はまず、なるべく集団を形成しないこと、
またみんなが同じことをしていたら、むしろすぐにやらないように心がけることにしました。
もしかしたらこの結論が、あのとき手に取ることのできなかった供物にかわるご利益だったのかもしれません(笑)。
人間は、自分の意志とは別に、ついまわりのひとと同じ行動をとってしまう傾向にあるようです。
何か利益があるものに人が殺到する時や、逆に危険から回避するときにパニックのようになってみんなが同じ行動をとるのは、一時的なのでわかりやすいのですが、
集団同調性バイアスが働いて社会全体がゆっくりと、無自覚のままにある方向に向かっているときは、とても危険であるように思います。
そのひとつに、環境問題があると思います。
みんながやっているからいいや、大丈夫じゃないの、
というのは、まさに集団同調性バイアスが働いている証拠であり、
そこから得られる安心感は錯覚であることをよく自覚する必要があると思うのです。
この集団同調性バイアスという観点から、ふだんの自分の行動を見直してみるというのはとても大切だと思います。
そして危機的な状況になったときでも、この集団同調性バイアスのことを思い出し、一歩ひいて考えてから行動するということが大切なのかもしれません。
今月の英会話のテキストのはじめに、リンカーンの言葉が紹介されていました。
Give me six hours to chop down a tree and I will spend the first four sharpening the axe.
6時間で一本の木を切り倒せと言われたら、私は最初の4時間で斧を研ぐ。
私はこれを読んだときに、う~ん、深い、、、と思わずうなってしまいました。
このことばには様々な教訓が含まれていますが、今回の話に引き寄せて言うなら、
もし周りの人たちがいきなり斧でガツガツ木を切り倒しにかかっていたとしても、
よく状況を判断して自分ひとりでも必要なことをしなさい、ということになるのかもしれません。
集団同調性バイアスは、自分自身も含めた人間の行動を理解する上で一つの大切なキーワードであろうと思います。
集団になったときに理性を失わないよう、普段から気をつけていたいと思うのであります。
おしまい
参考:
ためしてガッテン:
地震!台風!集中豪雨 災害で死なない新技術
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