2009年7月20日月曜日
アジアの中の日本 ≪続≫
ひきつづき、『帰化日本人』から印象に残った個所を書いていきます。
◎食
食事で面白かったのが、韓国、中国とも腹いっぱい食べるということが歴史上長年の夢だったらしく、
とにかくお腹いっぱい食べることが豊かなことだと考えていることでした。
だから両文化圏とも、「こんちには」の代わりに、「食事食べた」というあいさつをするそうです。
しかしお腹いっぱい食べてしまうと何もする気が起きないので、すぐれた文化が生まれにくいのではないかと語られていました。
本当にお腹いっぱい食べてしまったら、体は動かせないし、頭も働かないので、とにかく寝てるしかなく、確かに優れた文化は生まれにくいのかもしれません。
これもたまにならいいのでしょうが、豊かさ=腹いっぱい、と思っていると、経済的に許されるなら、毎日、毎食お腹いっぱい食べるようになるので、
たとえば歴代の中国皇帝の寿命は35-6歳だったというのはすさまじいなと思いました。(単に食事だけが原因ではないでしょうが)
そういえば、インドでもつい最近まで、太っている女性=裕福、美しい、と思われてきたそうです。現在ではダイエットが流行ってきているそうですが。。。
それに対して、日本人は食に対してかなり淡泊らしいです。腹八分なんていうのは、彼らにしたら驚きだそうです。
また「食事を済ます」という表現があるように、食に対してガツガツしているのは、みっともない、はしたないという感覚があるそうです。
そういわれてみれば、「~を済ます」というのは、義務的なものをとっとと片づけてしまう時に使う表現で、なるほどねぇ~と思わされました。
いま海外で一番多いのは中華料理屋らしいのですが、
最近は日本料理が世界各地で人気があるそうで、世界的に健康志向になってきているなか、あまりヘルシーでない中華料理が衰退していくのではないかと述べられていました。
しかし、和食が中国に行くと、たとえばマグロの刺身なんかも、日本のように適量が皿に盛られるのではなく、食べられないほどの量が山のように積まれて出てくるのだそうです(笑)。
それが中国流のもてなしらしく、和食が中国で流行っていったら、もはや刺身や寿司に使う魚は全部中国に持っていかれてしまうだろうと述べられていました。。。 (^_^;
しかしこの章ではなかったと思いますが、中華思想、すなわち中国こそが世界の中心であるという考え方は相当つよいらしく、
朝青龍が台湾に巡業に行ったときに、中国人の記者から、おまえはモンゴル人なのに中国語しゃべらないのかといわれたというエピソードが紹介されていました。
記者といえばそれなりの教養があるはずなのに、モンゴル=中国の一部だと思っているのだそうです。
そのとき朝青龍がどういう対応をとったのか興味のあるところですが、
中国こそ、更には漢族こそが世界の盟主たるべきという考えを多くの中国人がもっているのだとしたら、
異民族に対し暴力をふるうことなどなんでもなのかもしれません。
◎風習
日本の文化はそうとう神道のアニミズム的なものの見方が影響をしているそうです。
物に魂がある、物に魂をこめるという発想は、彼らからすると新鮮に感じるそうです。
そういえば、かんてんぱぱの会長塚越さんが述べていたのですが、ある時期多くの会社が中国などに工場をもって生産コストを下げようとしたのですが、
共産主義の人たちは物を物としてしか扱えないので商品の質が落ち、これは単純にコストダウンにはならないのではないかとおっしゃっていました。
たしかに日本的な感覚で商品に思いを込めるという発想がないのかもしれません。そういう意味で、日本のきめ細やかなサービスは世界一だそうです。
そういえばインドを旅していて思ったのが、何かを買う時に、売り手が自分の商品をカウンターなどにバーンとぶっきらぼうに投げてよこしたりするので、??と思っていました。
彼らにしたら物はあくまで物なのでしょう。
しかしこれは、たとえば一緒にいた欧米人なんかに、いまのはどう思うか尋ねると、やはり違和感を覚えるらしいので、日本人だけの感覚ではないようです。
しかし逆にお隣のネパールでは、お金を渡すときなどに右手に左手を丁寧に添えて渡すしぐさが謙虚に見え、とても対照的で面白いのです。
◎夢
お三方の国々では、若者は大きな夢を語る、あるいは語ってみせるのが当たり前だそうで、
大統領になる、ビルゲイツを超える社長になるなど、というのだそうです。
一方、日本人は夢が小さいというか、とても現実的なのだそうです。
しかしそういう現実的なところから、地道にコツコツ積み上げ、結果的に大きな仕事をなす人が多いのだと述べられていて、なるほど、そうかもしれないと思いました。
≪結論≫
以下本書を読んでの日本人の特徴を私なりに書き出してみると、
他のアジアの国々と比べ、日本人は和の国とよばれるように、やはり調和を重んじるというところがひとつの特徴のようです。
そこから思いやりなどもでてきているようです。
しかし逆に和を乱すもの、同質でないものに対しては、冷淡になり、それが差別などにつながるのではないかと思いました。
またアジアの他の国々のひとによる視点によって気付かされたのは、敗戦によるトラウマがそうとう残っているように感じました。
普段は意識しませんが、言われてみれば、日本の歴史の中で戦争に負けて占領されたことなどなかったのですから、相当な衝撃として残っているのでしょう。
そういうところから、自らの文化・歴史を自虐的にとらえる傾向が知らず知らずのうちに生まれ、また欧米に対するコンプレックスを生じるのではないかと感じます。
また神道のアニミズム的な世界観の影響から、物に魂を感じる、また小さいもの、小さい処に美しさを感じるのが特徴のようです。
日本人は感覚がとても繊細できめ細やかで、そういうところから物に魂を込めるような職人気質がでてくるのだそうです。
そのような職人気質による仕事が普遍性へとつながって、世界に通用する家電や自動車、アニメなどが出てきているのだそうです。
しかし日本人は小さいところ、目の前のことに打ち込むのが得意な一方、
ものごとを時間的、空間的に大きくとらえるのが不得意なのではないかと感じました。
そういうところからも、外交下手などがでているような気がします。
この本は、対談本ということもあって、どんどん読め、
またアジア近隣諸国から日本人に帰化した人たちによる鼎談という異色の視点を提供しており、とても面白かったです。
また本書の前にもこのお三方で出した本『売国奴 』というのがあるそうなので、そちらも機会があったら読んでみようかなぁと思いました。
おしまい。
参考:
参考:黄 文雄、石 平、呉 善花 (著)帰化日本人―だから解る日本人の美点・弱点李白社 (2008/11)
黄 文雄、石 平、呉 善花 (著)
売国奴
ビジネス社 (2007/10/12)
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